スクール・キラー お嬢様の秘密
自分は尻餅をついているので、下から見上げる形になる。
真っ白な、短い丈のワンピースを着た久我山美海が、裾を強く握りしめて美弦を見降ろしていた。
「…な、何しに来たんだよ、貴様」
思わず乱暴言葉で、低い声になる。
少し、彼女の肩がピクッと一瞬上下した。
美弦は立ち上がり、美海を睨みつけながら一気に話した。
「何しに来たんだよ、お前。
いきなり呼びやがって、俺を脅すつもりか?
俺のこと思い切りぶっ叩いたくせに、俺にまだ何か用か?」
わざと大きく舌打ちをして、彼女を睨みつける。
だけど美海は、その睨みに負けていなかった。
美海は心のどこかでわかっていた。
―――この睨みも声も言葉も、美弦の“タテマエ”だと。
「用があるに決まっているじゃないの」
「てかお前、この場所何でわかったんだよ」
「美弦のお母さんに聞いた。
…あ、里沙のお母さんでもあるのか」
「…お前、あの女に会ったのか?」
美弦は思わず、聞き返す。
早く逃げたいと思っていた。
壊れてしまいそうだったから。
俺が彼女へ向ける、“強気”の仮面が。