スクール・キラー お嬢様の秘密
美海を真っ直ぐ見つめる美弦の瞳は、哀しげに潤んでいた。
今にも泣いてしまいそうな。
だけど泣かないで、ただただ瞳を潤ませていた。
ちょっと色っぽい!?と美海がドキドキしたのは、ここだけの話。
「…最初は、屋上でも言った通り、キミが不幸になるのを見たかった。
だから、近づいた」
まるで昨日のテレビの話をするかのように、美弦は話しだす。
そこまで話して美弦は無造作に砂浜に座りこんだので、美海もスカートの裾を気にしながら隣に座った。
「中学の頃の僕は、本当に最低だった。
自分より誰かが不幸になるのを、見たかった。
僕は、決して幸せだなんて言えなかったから。
家でも、学校でも。
だから、自分より不幸になったり傷つく人を見て、自分の心とかを埋めようとしたんだろうね。
きっと未美子ちゃんへ対しても、同じ気持ちだった。
入学当初の僕は、中学の頃の僕と一切変わっていなかった。
入学式の時から、未美子ちゃんと話すようになった。
僕の予想通り、キミへのいじめも始まった。
近づいて優しくして、キミが泣くのを見たかった。
僕より不幸になってくれるのを、待っていた。
だけど、キミは泣かなかった。
泣かないで、いつも無理して『大丈夫だよ』って笑ってた。
泣けば良いのにって、ずっと思ってた。
上履きを隠された時、未美子ちゃんは泣いた。
僕はそれを見て、自分が喜ぶとばかり思ってた。
でもいざ未美子ちゃんが泣いているのを見ると、泣かないでって思い始めていた。
自然に、未美子ちゃんを、未美子ちゃんの笑顔を守ろうって思い始めていたんだ。
自分で信じられなくって、何度も嘘だって疑った。
でも未美子ちゃんに毎朝会う度、守ろうってずっと思ってた。
僕が未美子ちゃんの笑顔を守れるようにならないと。
だけどそのためには、僕の過去を明かしてはならない。
僕の過去を未美子ちゃんが知ったら、絶対に軽蔑すると思ったから。
隠し通す、つもりだった。
でも、あの日…屋上で、僕の過去が、佐山さんによって未美子ちゃんに知られてしまった」