スクール・キラー お嬢様の秘密







『それでね、美弦』

『……』

『父さんが、一緒に暮らさないかって』

『……え?』

『お義父さん、美弦のこと居候だって認めてないでしょ?
だから一緒に暮らさないかって言っておいてくれないかって』


『…でも、久我山さんから聞いたよ。
父さん今、かつて僕らが住んでいた家で暮らしているって。
父さんと一緒に暮らすってなれば、引っ越すことになるんだろう?

それだったら断るよ。
僕はこっちで、彼女と一緒にいたいんだ』





場違いだとわかっていても、あたしは思わず恥ずかしくなった。

一緒にいたいんだなんて…美弦って大胆!





『美弦に彼女がいることも知っていたそうよ。
だから、こっちに父さん引っ越してくるって』

『え?』

『だから、美弦が転校することも引っ越すことも、彼女と別れることもないのよ』

『……本当、に?』

『ええ』




その時の美弦は、凄く嬉しそうな顔をしていた。

まるでずっと咲かなかった花が咲いたような、可愛くて眩しい笑みだった。

…本人に言ったら、怒るかなぁ?




『…ワタシも色々考えたんだけど、やっぱり美弦は、父さんの方へ行った方が良いわ。
こっちにいても、美弦が辛いだけでしょうし。

本当は離婚の時も、父さんに引き取られるべきだったわね…。

ワタシが引き取るなんて言わなければ、あなたが“スクール・キラー”だなんて言われなくて済んだのかもね…』






言いながら、喜子さんは泣いていた。







< 218 / 225 >

この作品をシェア

pagetop