スクール・キラー お嬢様の秘密
『それでね、美弦』
『……』
『父さんが、一緒に暮らさないかって』
『……え?』
『お義父さん、美弦のこと居候だって認めてないでしょ?
だから一緒に暮らさないかって言っておいてくれないかって』
『…でも、久我山さんから聞いたよ。
父さん今、かつて僕らが住んでいた家で暮らしているって。
父さんと一緒に暮らすってなれば、引っ越すことになるんだろう?
それだったら断るよ。
僕はこっちで、彼女と一緒にいたいんだ』
場違いだとわかっていても、あたしは思わず恥ずかしくなった。
一緒にいたいんだなんて…美弦って大胆!
『美弦に彼女がいることも知っていたそうよ。
だから、こっちに父さん引っ越してくるって』
『え?』
『だから、美弦が転校することも引っ越すことも、彼女と別れることもないのよ』
『……本当、に?』
『ええ』
その時の美弦は、凄く嬉しそうな顔をしていた。
まるでずっと咲かなかった花が咲いたような、可愛くて眩しい笑みだった。
…本人に言ったら、怒るかなぁ?
『…ワタシも色々考えたんだけど、やっぱり美弦は、父さんの方へ行った方が良いわ。
こっちにいても、美弦が辛いだけでしょうし。
本当は離婚の時も、父さんに引き取られるべきだったわね…。
ワタシが引き取るなんて言わなければ、あなたが“スクール・キラー”だなんて言われなくて済んだのかもね…』
言いながら、喜子さんは泣いていた。