スクール・キラー お嬢様の秘密






『ごめんなさいね、美弦。
今まで、アナタのこと、ずっと傷つけて…』



ハンカチで目頭を拭いた喜子さんは、続けた。




『あの時はワタシ、頼れる人が誰もいなくて、辛かったのよ。
父さんになんて死んでも頼らないって決めていたし、ワタシには両親もいなかったし、友人もいなかった。

だから美弦だけ幸せになるのが許せなかったの。
だからアナタに、辛く当たってしまった。

アナタが小学生の時いじめられていることも知っていた。
もっと不幸になれって思っていたわ。

中学生の時いじめっ子へなったのも知っていた。
“スクール・キラー”と呼ばれるまでになっていたのは知らなかったけど。
きっと全部、ワタシのせいだったのね。

今のお義父さんと再婚してからは、その幸せを逃がさないよう必死だった。
美弦のことは、もう上手く好きになることが出来なくて、里沙ばかり気にしていたわ。

お義父さんに居候だって言われていたのも知っていたわ。
全部全部ワタシは知っていたのに、アナタを守ることは出来なかった。

ごめんなさい、美弦―――』





喜子さんは泣きながら、全てを告白した。

不器用なだけだったんだ、お父さんも喜子さんも美弦も。

上手く相手を愛せなくて、頼れなくて、傷つけることしか出来なかった。

…不器用すぎるよ……。





『彼女が家に来て美弦の居場所を聞いて、この子にも好きだって言ってくれる人がいるんだわって知ったわ。

そこで初めて気がついたの。
ワタシは美弦を好きだって言うことなんてなかったって。

今まで美弦を好きだって、大事だって言ってくれた人はいたかしらって考えて、誰もいなかったんじゃないかしらって結論に辿り着いたわ。

ワタシ、ずっと疑問だったの。
どうして美弦が“スクール・キラー”と呼ばれるまでのいじめっ子になってしまったのか。
どうして誰も愛することが出来なかったのか。

愛されてなかったからよね。
誰からも愛されたことがなかったから、美弦は誰も愛せなかったのよ。

“愛”そのものがわからなかったのよね、美弦……』








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