スクール・キラー お嬢様の秘密
溜息交じりにこくり、と頷いた美弦は、静かに話し始めた。
『そう、かもしれないね…。
僕は彼女に会うまで、人を好きになることも、大事だって思えることも何もなかった。
いじめをしていた時も、罪悪感なんてなかった。
いじめられる辛さはわかっていたんだけど、それを知ろうとしなかった。
僕より不幸になれって、ずっと思ってた。
でも、今は違う。
僕には大事だって、守りたいって思える人が出来たんだ。
母さんにも、お義父さんや里沙がいるんだから。
幸せに、なってね』
にっこり笑った美弦は、喜子さんを許せたんだって思った。
喜子さんも、涙の浮かぶ瞳を細めて、笑っていた。
『美弦も、幸せになるのよ。
久我山さん、美弦をよろしくお願いします』
頭を下げた喜子さんに、あたしは笑顔を見せた。
『はい!
あたしも、美弦には何度も救われてますから。
今度はあたしが救う番です。
久我山さんなんて固い呼び方しないでください。
あたしは久我山美海なので、気軽に呼んでください。
あと、先ほどは失礼しました。
山我フーズのこと、切り出してしまって。
本当はアナタが美弦の居場所を教えるってこと、わかっていました。
アナタも美弦も不器用なだけで、本当は相手を大事に思っているって、なんとなく感じていましたから』
『わかっていたの?美海』
『うん。
女の勘ってやつだよ、美弦!』
『…随分テキトーに聞こえるのは、何でかな?』
リビングに、あたし・美弦・喜子さんの笑い声が響いた。
笑っている2人は、やっぱり親子だと思えた。
雪解けは進んでいるんだ。
2人はもっと、仲良くなれるはず。