約束の暑中見舞い(5p)
夏休みに入り、二人の十五回目の誕生日がやってきた。
そして、その日は約束したばかりのデートの日。
生まれて初めて塾をさぼると、二人でバスに乗りこんだ。
一番後ろの席に二人、並んで座った。
目指したのは郊外にある動物園。
道中、和己くんの楽しい話でずっと笑いころげていた。
それに、和己くんのかばんの中にはおやつしか入ってなくて!?
それでまた二人、大笑いだった。
混んでいると思った動物園も、平日で、しかも開園直後。
思った以上に人が少なかった。
園内に入ると和己くんは当然といった感じで手をつないできた。
私はにっこり笑って、それを軽く振り払う。
「手ぐらいつないだっていいだろ。デートなんだから」
「よしてよ。誰かが見てたら勘違いするじゃない」
私ったら容赦がない。
「そんなに僕のことが嫌い?」
和己くんの体から空気が抜けていって、みるみるしぼんでいくのがわかる。
「そんなことないよ」
慌てて取りつくろう私を否定するかのように、和己くんはじっと私を見つめたままだ。
「そんなことないって、大好きだよ」
今さらながらに手を差し出すと、和己くんはその手を両手でにぎりしめた。
「あ、あのさ」
「な、なによ」
「本当に好きなら、キ、キスしてもいい?」