約束の暑中見舞い(5p)
「じゃ、キスするね」
和己くんは瞳を閉じて、唇をとがらせた。
私の心臓は異常に高鳴り、回りのもの全てが見えなくなる。
ちょんととがらせたその唇に私の全てが吸い込まれていく。
(だ、だめっ)
それを防ごうと抗う私に、魔物がそっとささやいた。
(えっ、なに?よく聞こえない)
ちょっと気を許した隙に私の唇は和己くんの唇に吸い込まれていた。
(あっ、・・私のファーストキス)
和己くんはパッと目を開けると、勝ち誇ったような顔をする。
「あーっ、今の違うからね」
「心配すんなって、黙っててやるよ」
私はなんだか無性に口惜しい。
「今のは違うんだって」
和己くんは突然走り出したかと思うと飛び回りはじめた。
「ひゃっほぅー」
今のは違うんだって・・。