WORKER HOLiC
 嫌な汗が背中を流れる。

 確かに、雪からはいつも飲み過ぎ注意って言われてるわ。

 あんたは、飲み過ぎると危ないって言われてもいたわ。

 ……てっきり、酔ったら暴れでもするのかと思っていたけど。

 違うのね?

 私、酔ったら違う意味で暴れる訳なの?

「すみません。酔った勢いと言うことで、お互いに忘れませんか?」

 恐る恐る提案すると、有野さんは持っていたお猪口を勢いよく置いた。

「……無理だな」

 な、何が?

 身を引いてしまった私に、有野さんは目を細めて首を振った。

「質問に戻るが、君はピル等は使ってないな?」

 当たり前でしょう!!

 私、生理不順でもなんでもないんだし。

 あれは女性の身体を妊娠状態にさせて、生理を定期的にする為に飲む薬だし。

 まぁ……別の目的で使う人もいるだろうけれど。

 って……?

「……………」

 慌てて有野さんの無表情を見た。

「悪いが、俺もあの夜は酔っていた」

 な、何……何がいいたいの?

「ちなみに、生理の予定は?」

「そ、そ……」

 そんな事、ズケズケ聞く話じゃないわ!

 恐らく、顔を真っ赤にさせて、パクパク口を開けたり閉じたりしてる私はかなり滑稽だろう。

 それでも、真剣な顔をする有野さんを見て笑うつもりはなかった。

「笑い事じゃないぞ」

 解ってます。

 解っていますけれど……

 あまりに突然で、どうすればいいのかも解らない。

 とにかく笑いおさめ、改めて有野さんを見つめると、ふっと祐介を思い出した。

 彼女が妊娠したと解った時、少しでも私の事を考えたんだろうか。

 私と祐介の立場は違うし、そもそも祐介は二股していた訳だけれど……

「私からも、質問いいでしょうか?」

 有野さんはお猪口から手を離し、私をじっと見据えた。

「有野さんには、現在恋人はいらっしゃいますか?」

「いないな」

 まぁ、こんな状況でいるとは答えないだろう。

「では、好きな方はいらっしゃる?」

「……それを答えて何になる?」

 ……いる訳だな。

 ふっと笑って、ジュースを飲んだ。
< 15 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop