WORKER HOLiC
「……で、うちのクリエイターは、酔っ払っているのかな?」

 低い声に飛び上がる。

 ひぃ……!!

 もちろん慌てて首を振った。

「酔ってません! 平気れす!」

 まったく全然説得力がない!

「僕は飲むなと忠告したじゃないか」

 有野さんは冷たい空気を纏いながら、表面上はにこやかに呟いて雪を見る。

「彼女、連れていってもいい? ちゃんと送り届けるから」

 ……いや。

 何かが絶対に嫌よ!

「大丈夫ですから! 一人で帰れます!」

 バックを握りしめて立ち上がり、呆然とする皆を残して走りだした。

 送られるなんて嫌。

 そもそも、それじゃ二人っきりになっちゃうじゃない。

 そんなのは御免だから!

 絶対に嫌!

「加倉井さん」

「きゃ───!!」

 いきなり聞こえた声にびっくりしてしゃがみ込むと、ポンポンと頭を叩かれた。

「そんなに驚かないでよ。俺が追っかけて来るの解っていて逃げてるのに」

 瞬きして見上げると、どこか面白そうな有野さんの表情が見えた。

 ……私、追っかけて来るとは夢にも思いませんでしたが。

「わ、わた……」

「はいはい。まずは深呼吸、深呼吸」

 気がつけば心拍数は爆発寸前。

 言われた通りに深呼吸して、ひょいっと立ち上がらせてもらった。

「あのね加倉井さん。俺がこの前お酒を止めたのには理由が二つあるんだが」

 理由?

「は、はい」

「君がお酒を飲むと危ないと思ったのが一点と……」

「は、はぁ」

 それは、飲み過ぎなければ……

「後もう一つは妊娠してたら、やばいかな? と思った訳ね?」

 ……に、妊娠って。

「まだ決まった訳じゃないって言ってるでしょう!!」

「してないとも言い切れないし」

 淡々と言う有野さんを、キッと睨み付ける。

「その根拠は!?」

「だって俺、つけないで3回は抱いたよ?」

 思わず目眩がした。

 ねぇ……

 なんでこの男は、とんでもないことを何でもない風に言うの?

「大丈夫かい?」

「……座りたいです」

「そうだろうね」
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