WORKER HOLiC
「私達もちゃんとサポートするからね」

 何故かにこやかな先輩たちに、有野さんは微かに楽しんでいる風。

 ……これは、してやられた気がするわ。

 がやがやと皆が出ていく中、私は微かに落胆して、渡された写真を揃えて有野さんに返した。

「……私は雪みたいに、一生懸命じゃないですからね」

「うん。神崎さんは、今時稀にみる感覚的な人だよね」

 よく解らないですが。

「雪をご存知ですか?」

「この間会ったでしょう? 何回か写真撮ってもらった事もあるよ」

 そうなんですか。

 あの子は他部署の仕事もホイホイ頼まれるから……

「宇津木から聞いてる通りの子だった」

「宇津木さん?」

「あいつ、新人発掘好きだからねぇ」

 はい?

「ま。それはともかく。よろしくね」

 ニッコリ微笑まれて立ち上がった。

「何が何だか解りませんでしたが、仕事はちゃんとやりますから」

「うん。よろしく」

「では、失礼します」

 有野さんを置いて会議室を出ると、大きな溜め息をつく。

 最近の一週間。

 何だか解らない感じに疲れる。

 今回のこのミーティングにしてもそうだけれど、有野さんが妙に目について落ち着かない。

 別に手掛けてるグラフィックスの全てが有野さんが持ってきた仕事じゃないけれど……

 なんでかな。

 本当に目につく。

 以前からそうだったのか……

 あの噂好きの澤井さんが騒いでいないから、多分、有野さんは以前通りなのかも知れない。

 だけど、見つけてしまう。

 ……まぁ、あんな事になれば誰でも少なからず意識しちゃうわよね。

 単に、私が集中出来てないって事なんでしょう。

 意識を仕事に集中しようとして頑張るから、余計に疲れるのかもね。

 集中、集中。

 ……何か甘いものが食べたい。

「きのたやのアメリカンショートケーキでもいいし、クリームケーキファクトリーのピーチタルトでもいいわね」

 帰りにデパ地下にでも寄って、買って帰ろうかしら。

 考えていたら、背後から微かな笑い声が聞こえた。
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