WORKER HOLiC
 そんな感じで澤井さんの質問を何となくかわして過ごし、仕事を区切りの良いところで終わらせると、デパ地下に寄ってケーキを買ってから地下鉄に向かった。

 私、相当疲れてるのかしらね。

 合計4つ入ったケーキの箱を眺め、溜め息をつく。

 短い期間で色んな事があり過ぎたのよ。

 週初めは朝起きたらハプニングで、心臓が飛び出るほどに驚いたし。

 そして有野さんは何を考えているか、普通じゃないからびっくりするし。

 もっと押しの弱い人なんだと思っていたら、結構強引だし。

 あれは、普段のボンヤリ笑顔からは想像もつかなかったわ。

 ううん。

 私が単に知らなかっただけかも。

 先輩達は〝わがまま有野さん〟なんて言っていたし、私が知らなかっただけね。

 それもそうよね。

 いくらなんでもポヤンとした引っ込み思案さんが室長補佐……マネージャーなんかになれるはずはないわ。

 おかしいな……とは感じていた事だけれど、そう考えればある意味は納得よ。

 そりゃ、あの笑顔が可愛いな……と思うこともたまにあったけど、まさかこんな形で私の人生に関わってくるなんて思ってもみなか……

 ううん。

 これから先は関係ないのよ。

 私の人生に男性なんかいらないし、欲しいとも思わない。

 だからこの件が終わったら、また仕事に集中できるわよね。

 私は今の仕事が大好きだもの。

 仕事以外に気を散らされたくない。

 立ち止まって振り返る。

 通り過ぎた地下街のお店。

 赤に白い文字の看板……

 ドラッグストアの文字を見ながら眉をしかめた。

 調べるだけなら簡単よ。

 だけど……

 もし、結果が出てしまったら……

 私はどうすればいい?















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