WORKER HOLiC
HOLiC 3

:Ⅰ

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「宇津木の奴、これで駄目なら絞め殺しておくから」

 一本のビデオテープを片手に、有野さんはにこやかにそう言った。

 製作時間にして半月。

 たった40秒のコマーシャルだけれど、コマーシャルで40秒と言えば長い方。

 やり直し回数その間に合計7回。

 撮影班は何度もT市に足を運んだし、私や有野さんは何度もコンテをやり直した。

 特記・第一クリエーティブ部の宇津木さんは完璧主義。

 雪はよく、あんな人と組んで仕事をしてるものだわ。

「ソレで駄目なら俺は嫌ですからね。T市に行くのってかなり疲れる」

 撮影班を引っ張って行った先輩が呟き、まわりの先輩達が苦笑した。

「そう言わず。グダグタ言っても俺が巻き込むから」

 爽やかに有野さんは言って、先輩は長テーブルに突っ伏す。

「有野さんの鬼っ!!」

 その言葉に笑いが起こる。

 うちの部は、善くも悪くもアットホームと言われているけど、言われる理由が何となく見えた。

 このチームに参加して半月だけだけど、皆遠慮なく意見を言うし文句も言う。

 まとめ役の有野さんが有野さんだからか……

 この人笑顔でやり直しを言ってくるけれど、その倍相談にも乗ってくれる。

 人徳か、なんなのか……

 私には、適当に仕事してる様にしか見えなかったけれど。

「加倉井さんも初参加お疲れさん。おかげで面白い意見が出たけど」

 有野さんの言葉に、書類を纏めていた手を止めた。

「こうやって、どんどん犠牲者が増えていくのね~」

 大槻さんの言葉に瞬きをする。

 ……犠牲者?

「有野さんも付き合いがいいから……」

「仕方がないだろ。あの馬鹿に付き合いきれるのなんてお前らしかいないんだからさ」

 ……全然意味が不明だわ。

 とりあえず解散、という感じで会議室を後にする先輩達に同行して、大槻さんの隣を歩く。

「あの……大槻さん」

「はい。なぁに?」

「犠牲者ってなんですか?」

 私の事を言っていた訳よね?

 聞くと、先輩達は笑いながら肩を竦めている。
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