WORKER HOLiC
「で。何か聞きたいことがある?」
有野さんは腕を頭の後ろで組み、ソファーに寄り掛かると私を見た。
まるで〝今日はいい天気だね〟って、くらいに軽く。
「ないです」
「ないようには見えなかったけど」
「気の迷いではないでしょうか?」
「あのね。それくらいの洞察力くらいなきゃ、この業界やっていけないだろ」
確かに、さっきの私の慌てぶりは尋常じゃなかったと思います。
それくらい読み解かなければ、有野さんはうちの部の室長補佐なんてやってられないと思う……
「……あのさ」
「はい」
冷静な声が出せたのに安心しながら、コーヒーを飲んだ。
「男と女が本能で動くってのは、よくある話じゃない?」
「ぶっ……!!」
コーヒーにむせる私を、有野さんは涼しげに眺めている。
「なっ……!! んなっ」
「うん。ビジネスライクの君よりいいんじゃないか?」
にこやかな有野さんに、一気に落ち着いた。
冷静にならねば!
「…これが普段の私です」
「……そうかな?」
有野さんの目がスッと細くなった。
「まぁ、いい。君はビジネスライクで行きたいと、そういう事だろう?」
「もちろんです」
真っ直ぐに見る私に、有野さんはニッコリと微笑んだ。
「君がそうしたいと言うなら……」
肩を竦めて息をついた有野さんに、そっと息を吐いた。
「じゃあ、私は帰ります」
「うん。じゃ、月曜日に」
にこやかな爽やかさに一瞬だけ疑いを持ったけれど、お皿だけは洗ってから、有野さんのマンションを後にした。
とりあえず、面倒な事は回避出来たのよね?
似たような住宅が並ぶ中、茶色のマンションを見上げて、肩を竦めた。
男の人なんて、私の人生にはいらない。
そう決めたのは、去年の今頃の話だ。
矢崎祐介。
それが当時、私が付き合っていた人の名前。
高校の頃からの付き合いで、一緒に上京して、お金が貯まったら結婚しようね……なんて。
今思い出すと、ママゴトの様な他愛ない恋愛。
それが変わったのは、就職してからの事だ。
有野さんは腕を頭の後ろで組み、ソファーに寄り掛かると私を見た。
まるで〝今日はいい天気だね〟って、くらいに軽く。
「ないです」
「ないようには見えなかったけど」
「気の迷いではないでしょうか?」
「あのね。それくらいの洞察力くらいなきゃ、この業界やっていけないだろ」
確かに、さっきの私の慌てぶりは尋常じゃなかったと思います。
それくらい読み解かなければ、有野さんはうちの部の室長補佐なんてやってられないと思う……
「……あのさ」
「はい」
冷静な声が出せたのに安心しながら、コーヒーを飲んだ。
「男と女が本能で動くってのは、よくある話じゃない?」
「ぶっ……!!」
コーヒーにむせる私を、有野さんは涼しげに眺めている。
「なっ……!! んなっ」
「うん。ビジネスライクの君よりいいんじゃないか?」
にこやかな有野さんに、一気に落ち着いた。
冷静にならねば!
「…これが普段の私です」
「……そうかな?」
有野さんの目がスッと細くなった。
「まぁ、いい。君はビジネスライクで行きたいと、そういう事だろう?」
「もちろんです」
真っ直ぐに見る私に、有野さんはニッコリと微笑んだ。
「君がそうしたいと言うなら……」
肩を竦めて息をついた有野さんに、そっと息を吐いた。
「じゃあ、私は帰ります」
「うん。じゃ、月曜日に」
にこやかな爽やかさに一瞬だけ疑いを持ったけれど、お皿だけは洗ってから、有野さんのマンションを後にした。
とりあえず、面倒な事は回避出来たのよね?
似たような住宅が並ぶ中、茶色のマンションを見上げて、肩を竦めた。
男の人なんて、私の人生にはいらない。
そう決めたのは、去年の今頃の話だ。
矢崎祐介。
それが当時、私が付き合っていた人の名前。
高校の頃からの付き合いで、一緒に上京して、お金が貯まったら結婚しようね……なんて。
今思い出すと、ママゴトの様な他愛ない恋愛。
それが変わったのは、就職してからの事だ。