WORKER HOLiC
 でも別に、れっきとしたストーカーまでされてる訳でもないのよね。

「……どうしてそんなに有野マネージャーをお嫌いなんですか?」

 呟いた後輩達を、無言で見る。

「ストーカーなら怖いですけど、夕飯誘うくらいならアプローチとしては間違ってませんよ?」

「ですよ~」

「うん。普通です」

 頷きあう後輩ちゃんたち。

 それはね……。

 最初が最初だからなのよ。

「振るなら振るで、きちんとお話した方がいいと思いますよ~?」

 それは……

 たぶん、そうなんだろうけれど。

 何となく聞いてくれないような気がするから……。

「俺もそう思うな」

 低い声に皆ビクッとして振り返った。

 そこには腕を組み、不穏に笑顔の有野さん……

 その影に、両手を合わせている澤井さんの姿があった。

 ……こういうときって、どうも気まずいかも知れない。

「お疲れ様です」

 愛想笑いの私に、有野さんも笑顔満面。

「お疲れ様。明日までにって頼んだ画像処理あったと思うけど、帰るの?」

「明日の9時にお届けします」

「……加倉井さん。僕は残業はきちんとつけた方がいいと思うが?」

「いえいえ。滅相もない」

 無人のエレベーターが来て、それぞれ無言で乗り込む。

 それがまた……

 なんとも気まずい。

「だから先輩、言ったじゃないですか~」

 貴女たちが何を言ったのよ。

「なんか、怖いんですけど~」

 後輩達のコソコソに、溜め息をつく。

「大丈夫よ。貴女たちには飛び火しないと思うわ」

 そう言ったら、有野さんが気楽に割り込んできた。

「なんなら、皆でご飯食べに行く?」

「お断りします」

 有野さんと愛想笑いで睨み合う。

 グラフィックの子達を巻き込むのは卑怯だわ。

「そうだね。君は仕事あるだろうし」

「明日までには間に合わせますから」

 エレベーターが1階に着いて、それぞれ降りる。

 その後ろについていこうとして……

「じゃ。皆、お疲れ様」

 ガッシリ頭を掴まれて冷や汗が流れた。

 驚いた様に振り返った澤井さんや後輩達を尻目に、エレベーターが閉まる。

 有野さんは愉しそうに、地下3階のボタンを押した。
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