WORKER HOLiC
「だけど俺も、さすがに君の記憶が飛んでくなんて思わなかったし。それに気付いた時にはまずいことしたな……と」

 いやいやいや……

 それ以前の問題の様な気がするわっ!!

 まず、部下に手を出そうと考える時点でかなりイケないでしょう?

 しかも、それほど接点もなかった男女がよ……?

「後は……そうだな。君に好きになってもらう前に自分勝手に行動したから、それは間違いだったよなぁ」

「……は?」

「そこが一番不本意な所だ。もし仮にあの時点で妊娠してたら、俺って君を追い込んだだけになるし」

 ……え?

「結婚は恋愛結婚がいいじゃないか」

 にこやかに言われて、ポカンとした。

 って……

 あら、まぁ……。

「夢見がちですね……」

 思わず呟いたら、有野さんに睨まれた。

「創造して夢を売る仕事してながら、自分が夢を追って何が悪い」

 ああ……

 いや、悪くないです。

「だから、地道に行こうと思ったら避けまくってくれるしね。君は」

 ええ。

 それはもう……

 一人で頷いていたら、有野さんは難しい顔で腕を組んだ。

「今日は素面だよね?」

「当たり前じゃないですか」

 だいたい、退社と同時に拉致したのはどこの誰ですか。

「やっぱり婚姻届けでもだしてから、ゆっくり好きになってもらう手段も有りかも知れないね」

 はぁ!?

 にこやかながら、不穏な空気の有野さんがゆっくりと立ち上がる。

「あ、あの。何をしようと思ってます?」

「え? そりゃ、一つの屋根の下に男と女がいるわけだし?」

 う……っ!?

「そ、それはある意味犯罪ですっ!!」

「えー。お願いさせる自信あるよ? だてに三回してないし」

 自慢になるかっ!!

「怪我人が何を言ってるんですか!?」

「ああ、大丈夫。こんなのは問題ないよ」

 私にとっては大問題だっ!!

 じりじり近寄ってくる有野さんに、オロオロと周りを見る。

 どうすればいい?

 どうしよう?

 まず、うちに……ってのが、いろいろとマズイわよね。

 だ、だれか!

 ……と、思っていた時、携帯の着メロが流れた。
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