WORKER HOLiC
 お互いに社会人なりたての新人で、忙しくなって……

 そもそも、私が就職したのは大手の広告会社。

 締め切りに間に合わない時なんかは、徹夜で仕事するなんて言うことも女性社員でもよくある話で。

 忙しい毎日が、お互いに溝を作り上げていった。

 それでも、誕生日だけはメールだけじゃなくて何かお祝いしたくて……

 徹夜続きの合間を縫って、彼のマンションにプレゼントを渡しに行った。

 びっくりしたのはお互い様。

 彼の部屋には可愛い女性。

 彼等の左の薬指にはペアのリング。

 〝すみません〟なんて言う彼女のお腹は膨らんでいた。

 呆然とした彼等から話を聞くと、半年前には入籍したと言う。

 半年、私とメールをしながら祐介はそれを告げずにいた、飄々とした彼の表情に不思議と怒りは沸いて来なかった。

「お前には仕事があるだろうけど、彼女には俺しかいないし」

 淡々と告げる彼にどうしてやろうか悩んだ時、また彼女が頭を下げた。

 〝すみません〟と言い続ける彼女は、ブカブカのTシャツに緩やかハーフパンツ。

 片や私は夏にもカッチリとしたパンツスーツ。

 カントリー風のインテリアに寛いだ感じの祐介。

 なんてちぐはぐな3人。

 何だか馬鹿馬鹿しくなって、彼等の前から立ち去った。

 気付かない私も私、彼も彼。

 正直、涙も出なかった。

 ただ大きな倦怠感が残っただけ。

 祐介が浮気性だと知っていながら放って置いて、目をつぶった私。

 最後は、いつも私の元に戻って来てくれていたから……

 どこかで彼を信じていたから。

 やめなさい……と、友達に何度も言われても、どうしても別れられなかったのは彼を信じていたから。

 でも、信用なんてすぐに消えると知ったあの日。

 異性を信じてみる事をやめた。

 恋愛なんて面倒だし、仕事をするのが性に合う。

 ふっと苦笑してマンションから視線をそらせた。

 有野さんなんて1番信用ならないじゃないか。

 部内では、室長補佐なんて重要な位置についているけど、いつもボンヤリ窓の外を眺めているし、女子社員のなかじゃ付き合いやすい上司……なんて言われてるけれど……

 飄々として、淡々として、ヘラヘラしていて。

 ちっとも真面目じゃないだけじゃない。

 そんな人と関わりになるのなんて願下げだわ。

 時間の無駄。

 そう思いつつ、歩き始める。

 次回、飲みに行くときには気をつけようかな……

 そんな風に考えながら。















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