WORKER HOLiC
「それは男性全体の話? それとも僕個人についての話?」

 楽しそうな低い声に身を竦めた。

 ……えっと。

 恐る恐る頭上を見上げると、腕は組んでいるけれど、妙ににこやかな有野さんの笑顔。

「加倉井さんの場合は、僕……かな?」

「……あ、いえ。その……」

 しどろもどろになる私に、有野さんは大きく頷く。

「それなら、とっても悲しいなぁ」

 胸を押さえ、演技がかったその声に目を細めた。

 茶化してしまうのは、男性特有の事なんだろうか?

 それとも、この手の男性はみんなこうなんだろうか?

 その動きとその態度は、よく祐介もやっていた。

 私がちょっと怒った時。

 宥めても機嫌が直らずに困ると、祐介はいつもそうしていた。

 ……そして、昔の私は不覚にも笑ってしまう。

「すみません。仕事中ですね」

 椅子を直しながら言う私に、有野さんは無表情になった。

「うん。そうだね」

「戻ります」

「……そうして?」

 それから軽い注意をまわりにすると、有野さんは自分の席に戻って行った。

「……………」

 ペンを指先で回しながら足を組む。

 狙った所で笑わなくてすみませんね。

 でも……

 私はまったく笑えないんです。

 そんな事を考えながら仕事をしていると、澤井さんからメールが届いた。


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件名:明後日19時集合
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明後日の夜、飲み会するわよ!
めかし込んで来なさい!

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 ……え。

 面倒臭い。

 渋い顔をしたらしい、澤井さんから再度メールが届いた。


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件名:(`へ´)
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来ないなんて言わせないわよ!

加倉井さん、絶対に有野マネージャーと絶対何かあったでしょう!?
態度がおかしいわよ!!

──────────


「……………」

 ……私が?

 ううん。

 私はいつも通りだと思う。

 思うけど……

 ちらっと澤井さんを見て、人差し指を左右に振る彼女に愛想笑いをした。

 ……この人。

 実はかなり怖いんじゃ……?















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