恋する七夕 ~ピンクの短冊に愛を込めて~
以前は駅の改札を出たところで見かけても、背が高く歩くペースの速い彼の姿はすぐに雑踏に紛れていってしまい、横断歩道のあたりでいつも完全に見失ってしまっていた。でも最近は、大抵エレベーターの前で彼に追いつくようになった。
それはつまり彼の歩くペースが以前より遅くなったということで、もしかして最近彼は疲れているのかなと思ってひそかに心配をしていたのだけど。
彼の顔を見る限り、そんなことはなさそうだ。挨拶を返してくれた彼の表情には疲労の色はなく、今日も爽やかで少年みたいな明るいまなざしをしている。それはこれから仕事に行く人の顔には見えないくらい、活き活きした表情だ。
職場にやる気に満ちた顔で向かうなんて、私はもう忘れてしまった感覚だ。今年で28になる私と彼は同年代くらいに見えるけれど、まだ仕事への情熱や意欲を新人の頃と変わらずに持っていられるらしい彼が正直うらやましい。
毎朝見掛けて挨拶を交わすたびに思うけれど、彼はほんとうに目に眩しいひとだ。いわゆる好青年というか、きっと両親に紹介したらもろ手を挙げて喜ばれるタイプって、こういう男(ひと)なんだろうなと思う。
(……ああ、でも人は見かけで判断しちゃいけないか)