恋する七夕 ~ピンクの短冊に愛を込めて~
「………越川さんって、いいですね」
酔っていたせいなのか。私は無意識に呟いていた。
「もし次に恋をするなら、私も越川さんみたいな人になりたいな」
越川さんみたいにさりげなく、でもちゃんと相手の話を聞ける人になりたい。
もっと何がしたい、何をしてあげたい、何をしてもらいたい。そんなことを衒いもなく相手に聞けて、自分からもあたりまえに話せる関係を築けるような、そんな人になりたい。次こそそんなカノジョになれたらいいなと思う。
そんなことを考えながら見るともなしに越川に視線を向けると。越川さんは頭を抱えていた。
「越川さん?どうしたんですか………?」
「………なんですかその殺し文句。無自覚だとしたら小悪魔ですよ、今の発言。俺に『さっさと告れ』の前振りですか?」
全身を心地よくめぐっているアルコールのせいで気分がよくなっていた私は、越川さんの発言の意味が全然わからなくて彼を見つめると、越川さんは観念したように深いため息を吐いた後言ってきた。
「俺、ずっと気になってたんですよ。同じビルになんか可愛い子がいるなって」
突然の話に驚いて「可愛い子」という単語は私の脳裏をただ上滑りしていく。そんな私を見て越川さんは苦笑した。
「わかりません?ぶっちゃけタイプなんです。俺自分がこんないい加減な感じだから、ガキの頃からしっかりしたタイプの女の子に惹かれるんです。かっちりしたスーツ着て法律事務所に勤めてるような地に足ついてる感じの職業の子とか、まさにどストライクで。
信号が点滅し始めると強引に渡りきろうとしないできっちり立ち止まる几帳面なとことか、いつも制服みたいにきっちりスーツ着てるところとかも個人的にツボで。実際話してみると、浮ついたとこがない真面目そうなとこがまたいいなって。あ、正直顔もかなりタイプです」
私がびっくりして思わず自分の人差指で自分の顔を指し示すと、越川さんは笑いながら頷く。
「うん、だから全部藤村さんのことだってば。……もうすぐ辞めるっていうから、口説くなら今しかないって思ったんだけど、間違ってる?」