恋する七夕 ~ピンクの短冊に愛を込めて~
私は戸惑ってしまって返事が出来ない。でもその戸惑いはイヤなものじゃないから、それが余計に私を気恥ずかしくさせてうまく返事が出来なくなってしまっていた。
「なんか困らせちゃったよな?いきなりごめん。でも期限切られたら、悠長になんてしてられないからさ。………俺、藤村さんのことずっと気になってたけど、今日こうして一緒にいてはっきりわかった。俺、あなたが好きだ」
越川さんの真摯な言葉に、私の体はアルコールの所為だけではなく熱く火照っていく。
「まだ知り合って間もないけど、俺の自論じゃ一緒に楽しく飲めて同じ飯を食ってうまいと思える相手は間違いないって思うんです。俺、今日めちゃくちゃ楽しかった。ついいろいろ話し過ぎちゃうくらいとにかく楽しかった。もうすぐデザート食べ終えなきゃいけないのがすごい残念なんです」
……それは私も思っていたことだった。
食事はもう終わりかかっているけれど、もうすこし越川さんと心地よい時間を過ごしていたいと名残り惜しく思っていた。
「藤村さん、急な話だし驚かせたと思うし、返事はまだ先でいいんです。けどとりあえず、連絡先おしえてもらえませんか?………またこの次のお誘いしたいと思ってるから。……またとっておきのうまい店に招待します。けど今度は酒と飯だけじゃなくて、俺のことも見て吟味してほしいって思っています」
はじめからほのかな好感を持っていて、なおかつその数値がじわじわ上昇し続けてる相手だ。
次を誘ってもいいと思うくらい、私と飲んだ時間を楽しいと思ってくれているのだとしたらうれしい。すごくすごくうれしい。
それにいきなり距離を縮めてこようとはしないで、まずは連絡先の交換からなんて、越川さんのその律儀で不器用で誠実なところにまた胸がきゅんとしてきてしまう。
「………連絡先なら、実は私、越川さんのもう知ってます」
私はそういうと、バッグの中から短冊を取り出した。文字が書き込まれたそれを見て、越川さんは「あ」と小さく声を上げる。
「それ、藤村さんに渡した短冊に紛れてたんですか?てっきりなくしてたと思ってたのに………」