恋する七夕 ~ピンクの短冊に愛を込めて~
「……………クッソ」
千草は健吾との別れにさっさと折り合いをつけて、そのうえすぐに男まで作った。
自分の思い通りにならない女ほど可愛げのないものはない。千草の場合、一見とても男に従順そうに見える分性質が悪い。振られて大泣きしたくせに、それでも一度も復縁を持ちかけてこない強情なところは本当に可愛げのかけらもない。
(もうあんな女のことなんて知るかよ)
所詮千草も自分には合わない、付き合うに値しない女だったのだ。女も、セックスをする相手も、代わりなんていくらでもいる。同業の友人たちとまたショットバーにでもいって女引っ掛けてこればいい。幸い弁護士と言う肩書をちらつかせると面白いくらい女のガードは緩くなる。
そんなことを思いながら、切らした煙草を自販機で買ってきた後、なかなか来ないエレベーターをイライラしながら待っていると。エントランスの方から目障りなくらい背の高い男が大股で歩いてきた。
-------千草の男だ。
パシリにでもされたのか、両手にすごい数のコンビニのアイスコーヒーのカップを持っている。先に待っていた健吾に気付くと、男はエレベーター前に並びながら軽く会釈をしてくる。
おそらくこの男は、千草の元カレが健吾であると気付いている。
自分の女をこっぴどく振った男が隣にいるというのに、別段気にする様子もなく嫌味なくらい爽やかな笑みで挨拶してくるなんて、その余裕ぶった態度がまず気に入らない。どうせ奥手そうに見えるけれどセックスには健気に応じる千草の手管に、この男はすっかりのぼせあがって、頭の中がおめでたいことになっているのだろう。