恋する七夕 ~ピンクの短冊に愛を込めて~
「はあ?………あんた……………たいした奥手だな」
半分信じられない気持ちで呟くと、男はすこし恥ずかしそうに自分の頬を掻く。この男の表情はまだ千草とは体の関係がないと暴露しているようなものだった。そんな男を見て健吾の方が完全に動揺してしまった。
「ガキの恋愛だってそんなトロトロしてねぇだろ。まだヤらねぇとか、あんたそんなんで女捕まえておけんのかよ」
内心の狼狽えを隠すように強気な嫌味を突き付けてやると、男は苦笑いを浮かべて答えた。
「ですよね。付き合ってもうすぐ1ヶ月だし、ペース遅いって自覚もあるんですけど………けど、今までとは違う付き合い方をしたいと思ってる相手なんですよ」
男は健吾の嫌味なぞ全然効いていなくて、うざったいくらい爽やかにそう告げてきた。
------安易に体の関係に持ち込まず、急がず焦らず彼女を大事にしたい。だからまだ手を出していない。
そう宣言された気がした。
千草はこの男にそうやって大事に大事にされて、それで最近あんな晴れやかな顔をするようになったのかと、健吾は苦い気持ちでいっぱいになる。
(なんでこいつなんだ。俺だってあいつを大事にしてやってたのに)
セックスをしなくても満たされるほどに、千草とこの男との付き合いは順調なのだろう。これでこの男に抱かれるようにまでなったら、千草はどんな女になってしまうんだろう。
いまだって十分うっとうしいくらい幸福そうな顔をしている千草が体までこの男で満たされたら、きっと健吾が全然知らない女になってしまうだろう。