恋する七夕 ~ピンクの短冊に愛を込めて~
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中原健吾は去年うちの事務所にやってきた弁護士だ。
彼は所長と前の奥さんとの間に生まれたひとり息子で、所長はいまだに彼が幼い頃に浮気した挙句に彼を置いて離婚をした負い目があるので、仕事でも経済的にも彼を甘やかしているというのは他の事務員や先生たちからさんざん聞かされていたことだった。
私も当初は手当たり次第に女の子に声を掛けていく健吾のことをよく思わなかったけれど、でも彼は私が仕事でいっぱいいっぱいになってるときもよく声を掛けてくれて、食事や遊びにもあちこち連れ出してくれた。
散々彼の女癖の悪さを聞かされていたのに、スーツの着こなしも女の扱いもこなれている健吾に、恋愛経験が無きに等しい私はすぐにのぼせあがって、あっという間に抱かれた。そしてあっさり捨てられ、年上の友里さんに乗り換えられた。
健吾の地元には有名な七夕祭りが毎年行われていて、それを『一緒に見に行こう』と誘われたのがつい2、3週間前だというのにあまりにも早すぎる展開。
これみよがしに友里さんが休憩中に旅行のパンフレットを眺めているところからすると、今年は友里さんを連れていくつもりなんだろう。
そんなこと、もうどうでもいいことだけど。
(ここは仕事をしに来るだけの場所だ)
頭の中から健吾に関する感情も何もかもをすべてを締め出して、パソコンを起ち上げた。