【短編】龍くんと南ちゃん
◇幸せな日常
朝――目が覚めると、愛する人の寝顔がある。
整った顔、長い睫毛、サラサラの髪。
結婚して数か月、まだ付き合い始めの頃のようにドキドキする。
「龍くん、朝だよ」
健やかな寝顔の耳元で、囁くと『ん…』とみじろぐ。
ゆっくりその瞼が開く。
あぁ、色っぽい……
その瞳が私の顔を捕らえる。
目が合った…………筈なのに。
すーっと閉じられる瞼。
ちょっと待って!
「龍くん!練習遅れますよ~!」
本気で起こすべく大声で叫ぶと、ビックリしたのかガバッと起き上がった。
寝ぼけ眼でキョロキョロ辺りを見回してる。
結婚して一緒に住むようになってから気付いた事。
彼はほんとに朝が弱い。これは義母さん曰く、寝起きの悪さは昔からみたいで、ちゃんと起こしてあげないと、いつまで~も寝てるんです。
そしてやっと私がいるのに気付いたみたい。
「あ、南ちゃん。おはよ~」
ぼーっとした顔が急にフワッと優しくなって、筋肉質な長い腕が伸びてくる。
首と体に回された手が力強く引き寄せてくれる。
「今日も大好き♪」
沢山の抱擁とキスが降ってくる。
龍くんは結婚してからも変わらず、毎日好きだって言ってくれる。
痩せたと言ってもまだLLサイズだし、お世辞にも可愛いとは言えないこんな私に、背が高くて爽やかでスポーツマンで相変わらず格好いい19歳の旦那様がいるなんて………信じられない。まさに毎日が夢のような生活です。