【短編】龍くんと南ちゃん
「何だか少し張るみたい。私が緊張してるからですかね……大丈夫です」


「ならいいけど…無理しちゃダメよ?あ、ほら龍弥くん蹴るよ」




さっきのは反則だったのか、ゴールに向かって龍くんがシュートするみたい。



きれいなフォームでボールを蹴ると、弧を描いてゴールに吸い込まれる。




周りの凄い歓声。龍くんに駆け寄るチームメイト達。



凄い格好いい!
初めてサッカー見たけど、こんなに興奮するんだね!

手がちぎれんばかりに拍手を送る。




「あ………!」





龍くんがこっちを振り向いた。気付く訳ないと思ってたけど……







ドキン





嬉しそうにニコッと白い歯を見せて笑ってる。こっちに向かってガッツポーズ。


ここにいるの、分かっててくれたんだ。




「ほらっ、龍弥くん南ちゃんに気付いて…」

「「キャー―――――――ッ!リュ―――――ウ!!うそっ、こっち見たあっ!!!!」」



嬉しそうな璃乃さんの声をかき消してしまう程の奇声にビックリ!


隣りの女の子達……随分熱狂的。ある意味ちょっと怖いな。





ドンっ




不意に体にかかる衝撃。隣りの女の子の肘が肩や腕に当たる。
応援に夢中になって、気付いていない。



「ちょっとあなた。この子妊婦さんなのよ。少し遠慮して」



堪り兼ねた璃乃さんが注意をしてくれた。
けれど、帰って来た答えは冷たいものだった。




「はぁ?そんなの関係ないし。大体、そんな腹して普通こんなとこ来る?ぶつかられたくないなら家にこもってたら?」




呆気に取られる私。


だって私の旦那様の応援だよ?今、凄く頑張ってるんだよ?私だって少しは力になれるかもしれない。応援する事しか出来ないけど……それでも同じ空気の中で一緒に頑張りたい。



世の中にはこんなに冷たい人もいるんだ……




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