【短編】龍くんと南ちゃん


何だか悲しくなって俯いた。

そんな私の目の前が急に遮られる。
顔を上げると、立っていたのは……ライトくん!?

そして腕をそっと引っ張られる。そっちを見ると…璃乃さんが笑ってる。



「南ちゃんもっとこっちに寄って。さぁ、試合の応援しよっ♪」




誘導されるまま、席を一つ移動する。すると、今度は私が居た席にライトくんが腰を下ろす。

なんてスマートな対応なんだろ……



「気配りも出来ない人達のために楽しい時間を無駄にする事ないんだから」

「璃乃さん、ライトくん…ありがとうございます」




「ちょっと待ってよ。気配り出来ないって誰の事よ。そっちが周りの迷惑考えてないだけでしょ?」



ライトくんの向こう側から食ってかかる女の子達。
璃乃さんは溜め息を一つつくと『ライト』と何かの合図。
そのライトくんは、女の子達の方を向いた。


「あのさ、俺と龍弥高校のクラスメートだったんだよね。この事知ったら龍弥どう思うかな」

「な、何よ。脅す気?」

「いや?今のうちに止めといた方が身の為だって忠告」



モデルのように素敵なライトくんに凄まれたらもう何も返せない。取りあえず引き下がったみたい。


でも……身重である人は世の中に沢山居るはずなのに、実際自分がそうなってみないとなかなか目につかないもの。
そして自分が経験してみないとその大変さを理解出来ない部分もあったりする事が、今回痛感させられた。

実際、堅いベンチに長時間座ってると、お尻と腰が痛くて痛くて………


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