【短編】龍くんと南ちゃん
そんな時だった。背中をトントンと叩かれる。
振り返ると、年配の男の人が無表情で小さい座布団を差し出してくれている。
「使いなさい」
「えっ、でも……」
すると、その隣りに座っている女の人がにこやかに話しかけて来る。
「遠慮しないで。この人愛想ないだけで、悪気はないの。座りっ放しは辛いでしょ?」
「ご親切にありがとうございます」
ありがたい。人から受ける親切が、こんなに身に染みて嬉しいなんて……
さっきまでの沈んだ気持ちが嘘のように元気になってきた。
「ああいう子達も世の中にはいるけど、堂々としてていいのよ。好きな事を無理せずやるのは、胎教にもとても良い事だわ」
「はい」
「あなたも誰かの応援?私達この試合に息子が出てるの。チケット送られて来てね、初めて見に来たのよ」
嬉しそうな女の人が指差した先は、さっき龍くんに手を貸した人。背番号10、TAIRA。チームの中心的なポジションの選手……
「小さい頃から勉強もろくにしないで、サッカーばっかりでね。スポーツ選手なんて体壊したら終わりだからって随分反対してたんだけど…それがこんなに活躍するなんてねぇ」
フィールドで生き生きと動く息子さんを、目を細めて見てる。旦那さんも眉間にシワを寄せて、口をへの字に曲げて……それでも目が追っているのは息子さんの姿。
いいなぁ、素敵な親子の姿。
「で?あなたはどなたの応援?」
「いやぁ、ははは」
隣りに居る熱狂的ファンの子達の前では……正直、ちょっと言い出しずらいなぁ。
「あ、見て。龍弥くんにボール渡ったよ!」
璃乃さんの声に振り返ると、ほんとだ!ドリブルしながら一人二人と交わして行く。
平良(たいら)さんにパス。更に二人で、パス、フェイント、ドリブル……華麗なパスワークに目を見張る。
振り返ると、年配の男の人が無表情で小さい座布団を差し出してくれている。
「使いなさい」
「えっ、でも……」
すると、その隣りに座っている女の人がにこやかに話しかけて来る。
「遠慮しないで。この人愛想ないだけで、悪気はないの。座りっ放しは辛いでしょ?」
「ご親切にありがとうございます」
ありがたい。人から受ける親切が、こんなに身に染みて嬉しいなんて……
さっきまでの沈んだ気持ちが嘘のように元気になってきた。
「ああいう子達も世の中にはいるけど、堂々としてていいのよ。好きな事を無理せずやるのは、胎教にもとても良い事だわ」
「はい」
「あなたも誰かの応援?私達この試合に息子が出てるの。チケット送られて来てね、初めて見に来たのよ」
嬉しそうな女の人が指差した先は、さっき龍くんに手を貸した人。背番号10、TAIRA。チームの中心的なポジションの選手……
「小さい頃から勉強もろくにしないで、サッカーばっかりでね。スポーツ選手なんて体壊したら終わりだからって随分反対してたんだけど…それがこんなに活躍するなんてねぇ」
フィールドで生き生きと動く息子さんを、目を細めて見てる。旦那さんも眉間にシワを寄せて、口をへの字に曲げて……それでも目が追っているのは息子さんの姿。
いいなぁ、素敵な親子の姿。
「で?あなたはどなたの応援?」
「いやぁ、ははは」
隣りに居る熱狂的ファンの子達の前では……正直、ちょっと言い出しずらいなぁ。
「あ、見て。龍弥くんにボール渡ったよ!」
璃乃さんの声に振り返ると、ほんとだ!ドリブルしながら一人二人と交わして行く。
平良(たいら)さんにパス。更に二人で、パス、フェイント、ドリブル……華麗なパスワークに目を見張る。