【短編】龍くんと南ちゃん

◇報告があります…

龍くんがアナウンサーに何か耳打ちした。
なんだろう。これで終わるんじゃないのかな。
もうバレないうちに早く帰りたいよ~。



ソワソワしている私に気付いて、璃乃さんが覗き込んでくる。


「どうしたの?具合悪い?」

「いえ。なんか何事もないうちに帰ろうかな~と………」




「あの、すいません」



急に通路側から声を掛けられた。見ると、マイクを持った女性がニコニコ立っている。



「片岡選手の奥様ですか?こちらにいらっしゃると聞いたので…」




えっ!とビックリしてる私達にマイクを向けて来る。
周りもざわつき始めた。まずい………



でも………



『さすが片岡選手の奥様。可愛らしいですね』




マイクを向けられたのは璃乃さん。
この人、絶対璃乃さんて勘違いしてる。そりゃそうだよね。私じゃ釣り合わないし……勘違いされてもしょうがない。




『違げーよ』

『えっ、あ……じゃあの…どちらが?』



ムッとした顔のライトくんが、璃乃さんを引き寄せる。
慌てるリポーター。
その声を、ばっちりマイクが拾う。



『コイツは俺の!龍弥のはそっち!』

『そうだよ!間違えないでよ』




思ってもいなかったライトくんとフィールドからの龍くんの言葉、更に自分に向けられた人差し指にビックリ。

ええっ!?二人とも何言っちゃってんですか!



『あの……こちらが?』

『……は…い、ごめんなさい』



リポーターが戸惑っているのがよくわかる。


『南ちゃん、勝ったよ!♪』



こっちに向かって、手を振って笑ってる龍くんに、恐る恐る振り返す。



もちろん、周りからは歓声をかき消すくらいの悲鳴とブーイングの嵐。



龍く~ん、今回ばっかりは恨みますよ~(泣)




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