【短編】龍くんと南ちゃん
『偶然分かったの。婦長が体つきが違うって………今、六か月だって。全然気付かなかったの、ごめんなさい』
なんとか言えた。
涙目で璃乃さんを見ると、笑ってる。ずっと手を握ってくれてた璃乃さんの目も赤いよ。
「南ちゃん、ほらちゃんと龍弥くんを見て」
璃乃さんに促されて恐る恐るフィールドを見ると…………
龍くん泣いてる!?
頬に光るのは、汗じゃない。
でも……凄く嬉しそうだよ。
『……っ、本当に?それ本当なの?』
『そうだよ。嘘じゃない。ここにいるから』
ちょっと出てきてるお腹を擦る。
あれ?今の……
動いた!?
初めて感じた胎動。ポコンて泡が弾けるような感覚。
嬉しい。早く龍くんにも教えたい。
『もー俺マジ嬉しい!』
龍くんの歓喜の叫びが引き金になって、会場全体が祝福の歓声に包まれる。
フィールドでは選手達が龍くんの胴上げを始めてる。
あちこちから沸き上がる。『おめでとう』『お幸せに』の声に……
本当に龍くんのお嫁さんになれてよかった。
私、心からそう思ったんだよ――――――