【短編】龍くんと南ちゃん
◆初めまして……
ピーッ!!
試合終了の合図が鳴り響く。
「よっしゃ!」
今日は一段と張り切った試合だった。
俺だけじゃない。先輩方もキャプテンの平良さんも皆一丸となって気合い充分。
おかげで4‐1で圧勝。
何故かというと………
今朝方、南ちゃんに陣痛が来た。いよいよなんだ。
あれから四か月ちょい。俺達はこの日を心待ちにして来た。
俺の初試合の日の妊娠宣言、しかも六か月だったなんて…ちっとも気付かなかったのは俺も悪いんだけど。
前の日、結構激しくしちゃったけど大丈夫だったかなとかチラッと考えたけど、もうそれどころじゃないくらい嬉しくて。思わず、公衆の面前で泣いちゃった(…格好悪りぃ)。まぁ、地元のラジオ局の中継だったのがせめてもの救いだけどな。
南ちゃん、先週まで大きなお腹で看護婦してたんだ。
今は俺もそこそこ稼げてるし、ホントは仕事も休んで体を大事にして欲しかった。
でも……絶対辞めたくないんだって。看護師は自分の生きがいだからって。かえって体動かしてた方が体重管理できるし、気が紛れるからってぎりぎりまで働くと、がんとして譲らない。相変わらずそうゆうとこ頑固なんだよな。
予定では出産に立ち会うはずだった。でもまさか今日来るなんて………どうしても抜けれない大事な試合。
南ちゃんは『一人でも大丈夫だよ』って笑ってくれてたけど、時折辛そうに顔をしかめてるのを見ると……役に立たないの分かってるけど、側に居たいと思った。
後ろ髪引かれる思いで、南ちゃんを病院に残し試合に向かった。
取りあえず、南ちゃんが勤務してた病院だし、何かあったら璃乃さんが連絡くれる事になってるから大丈夫なんだけど……気が気じゃない。
着いてすぐ、監督とチームメイト達に産まれそうなのを伝えた。
そしたら皆何故か大慌てで(苦笑)。
「やべぇじゃん!早く試合終わらせようぜ」