【短編】龍くんと南ちゃん
それに、仕事を理由にできませんでしたなんて言いたくない。それこそ義父さん義母さんに申し訳がたたないでしょ。
「出来た……。さぁ、そろそろ出掛けないと」
ふーっと一息つく。
気付くと、なんとなくダルい。それに体が重い。
「夏バテかなぁ……」
食欲もわかない。ちょっと横になりたい気分だったけど、もう仕事行かなきゃならない時間。これくらいで休んでられない。
「頑張ろ!」
気合いを入れて家を出た。仕事に集中すれば多少のことは忘れちゃうから。
案の定、何事も無く勤務時間が過ぎて行く。
朝の七時。龍くんを起こす時間。
『……はい』
いつもの龍くんの寝ぼけ声。さては五分前にセットしてた目覚まし止めて普通に眠ってたな。
「龍くん私。おはよう、ちゃんと起きてね」
『あ、南ちゃん。おはよ』
声のトーンが変わった。目、覚めたかな。
「龍くん二度寝しちゃダメよ?」
『うん。今日は大丈夫♪もう起きたから。南ちゃんももう少しだから頑張って』
「ありがとう。じゃあね」
ピッ
「あらっ、旦那様にラブコール?」
「いや…あはは」
通り掛かった看護師仲間に冷やかされる。やっぱりこういうのって恥ずかし~……
そそくさとその場を後にする。
徹夜明けで疲れてても、龍くんの声を聞いただけで元気が出てくる。
食欲はやっぱりイマイチだけど、ダルさも抜けたみたいだし快調快調♪
「そうめんでも食べようかな……」
なんて呑気に朝ご飯を考えながら朝の業務に向かった。
でもこの時私は、まだ自分の体に起こっている重大な異変に気付いていなかった―――――――