【短編】龍くんと南ちゃん


それに、仕事を理由にできませんでしたなんて言いたくない。それこそ義父さん義母さんに申し訳がたたないでしょ。




「出来た……。さぁ、そろそろ出掛けないと」




ふーっと一息つく。
気付くと、なんとなくダルい。それに体が重い。



「夏バテかなぁ……」



食欲もわかない。ちょっと横になりたい気分だったけど、もう仕事行かなきゃならない時間。これくらいで休んでられない。




「頑張ろ!」





気合いを入れて家を出た。仕事に集中すれば多少のことは忘れちゃうから。





案の定、何事も無く勤務時間が過ぎて行く。

朝の七時。龍くんを起こす時間。




『……はい』



いつもの龍くんの寝ぼけ声。さては五分前にセットしてた目覚まし止めて普通に眠ってたな。



「龍くん私。おはよう、ちゃんと起きてね」
『あ、南ちゃん。おはよ』


声のトーンが変わった。目、覚めたかな。



「龍くん二度寝しちゃダメよ?」

『うん。今日は大丈夫♪もう起きたから。南ちゃんももう少しだから頑張って』

「ありがとう。じゃあね」



ピッ




「あらっ、旦那様にラブコール?」

「いや…あはは」




通り掛かった看護師仲間に冷やかされる。やっぱりこういうのって恥ずかし~……

そそくさとその場を後にする。

徹夜明けで疲れてても、龍くんの声を聞いただけで元気が出てくる。
食欲はやっぱりイマイチだけど、ダルさも抜けたみたいだし快調快調♪



「そうめんでも食べようかな……」



なんて呑気に朝ご飯を考えながら朝の業務に向かった。




でもこの時私は、まだ自分の体に起こっている重大な異変に気付いていなかった―――――――





< 4 / 19 >

この作品をシェア

pagetop