【短編】龍くんと南ちゃん
◇感動した日
ピンポーン……
「はぁい?」
あれから数か月が過ぎ、暑さも和らいで随分過ごしやすくなった。
普通に食欲も戻ったし、やっぱり夏バテだったみたい。
ガチャッ
「南ちゃんっ!!」
「わっ……!?」
戸を開けた途端、ガバッと抱き付かれ視界が暗くなる。龍くん?何!?
「決まったよ!」
「ん?どうしたの?」
走って来たのか息を弾ませて、頬を紅潮させたジャージ姿の龍くん。
なんだか凄い嬉しそうで……か、可愛っ!
「次の試合。レギュラーに決まった!」
「うそっ!」
凄い!入って半年、早くもレギュラーなんて。凄く頑張って練習の他に別メニューこなしてたもんね。
「おめでとうっ!」
嬉しくて堪らずに龍くんに飛び付いた。
「おっ……とぉ」
龍くんの体が後ろに傾く。勢いつけ過ぎた?
なんかまたちょっと体重増えてリバウンド気味だから……。
「ご、ごめん。また太ったから……」
慌てて体を離そうとしたら、背中に回された腕にギュッと押さえられる。
「離れないで」
「でも…」
両方の腕に抱き締められて、軽い圧迫感を覚える。龍くんの胸、心臓の音が早い。
「だから太ったとかって関係ないから。それよりも…ほんと南ちゃんのおかげ」
「私はなにも…龍くんが頑張ったからだよ」
「ううん。南ちゃんが俺の為に尽してくれる事で、サッカーに専念できるんだよ?疲れて帰って来ても南ちゃんがいるんだって思ったらそんなの吹っ飛ぶ位元気貰える。そういういい環境をくれてる、南ちゃんのおかげ」
「龍くん……」
嬉しくて涙が出る。そういう風に思ってる事を素直に口に出して伝えてくれる。
私、龍くんと一緒になれてよかったよ。