【短編】龍くんと南ちゃん

「南ちゃん、応援来てよ」

「もちろん。絶対行くよ」




顔を上げて笑うと、龍くんの嬉しそうな顔。


「よしっ!」

「きゃあっ!?」



体が宙に浮く。龍くんに軽々と抱き上げられたんだ。また筋力付いた?



「どこに……」

「前祝いちょうだい♪」

「ええっ!?だって練習して来て疲れてるのに?」

「疲れてないもん。別腹っしょ♪」




私は龍くんに、そのまま寝室に連れて行かれて―――――☆
















◆◆◆

「南ちゃん、なんか顔色悪くない?」



今日は璃乃さんと日勤。この後璃乃さんとその彼のライトくんと一緒に、待ちに待った龍くんがレギュラーで出場する試合の応援に行く予定。

なんだけど………

なんだかやたらと体調が悪い。最近貧血気味だったけど、今日はことさらひどい。



「診て貰った方がいいんじゃない?」

「あ、でも大丈夫です」




おかしいなぁ。ちゃんと食べてるんだけど……



「ちゃんとしないと龍弥くん心配するよ?」

「はい、でも……」




今日何かあるのは絶対困る。何があっても試合は見に行きたい。




「南ちゃん」

「婦長…」




璃乃さんとそんな押し問答をしていると、後ろから婦長に声を掛けられる。璃乃さんの未来の御姑さん……



「ちょっと気になってたんだけど……」

「はい?」

「あなた、最近腰周り…」

「あ、分かります?ちょっとまた太って来ちゃって……」



結婚指輪はキツくなってきたし、LLサイズのナース服がパツンパツン。しゃがむとお腹周りの肉が邪魔して苦しいくらい。
でも婦長の次の言葉ではたと動きが止まる。




「あなた、それ本当に太ったの?」



「え……どういうことですか?」



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