Focus

へええっとミオの目が三日月になる。

「なに、惚れた?」

「違うって…あんまり真剣だったから、つい…」

「つい?」

「うん…撮った」

そう、綺麗だと思った。この一瞬を切り取ってカメラに収めたいと思うほど…それはきっと欲望だ。

「意外よね、ファッション雑誌の撮影なんてしてたらモデルさんと知り合う機会だって、いっくらでもあるでしょうに」

「それは仕事だから。それにモデルの子だってバカじゃないでしょ。自分だって他にいくらでも芸能人と知り合えるんだから、一介のカメラマンなんて見向きもしないよ」

「そう?結輝は見た目だって悪くないし、いいと思うけど」

「オレお金ないからダメ。モデルなんて…そういうのダメだよ」

ふーんと頷きながら、ミオは作業を再開する。これからクリームでデコレートするなら、多少乱暴に紙を剥がしてもいいはずなのに、ミオはゆっくりと丁寧だ。

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