Focus
「好きです。俺の物になってください」
言っている自分が信じられないくらい、必死になっている。沙那さんに少しでも見てもらいたい、気を引きたい。そう思ったら言いつのっていた。
抱きしめた腕のなかで沙那さんが頷くのがわかった。
信じられなくて、でも嬉しくて腕に閉じ込めるように抱きしめた。
「……ありがとう」
顔、見られなくてよかった。喉に熱い塊が落ちてきて泣きそうになってる。目に力を入れて、喉の塊をやり過ごす。
今、声を出したら嗚咽が漏れるとわかっていた。
ぎゅっとと抱きしめたまま、沙那さんの香りを吸い込み、髪にキスした。
この気持ちを忘れることなく、ずっと持っていたい。そう願いながら。