Focus

広げてあるスケッチブックには、ありとあらゆるケーキ、ケーキ、ケーキだった。

自分でデザインしたもの、雑誌の切り抜きに感想を書いたもの、有名なコンクールの作品、全てケーキだった。


「ケーキばっか」

「いいでしょ、別に」

いらいらとしたミオが爪を噛む。それは今まで見たことはなかったけれど、いらいらした時の癖らしく、親指の爪だけは白い部分が見えないほど短くなっていた。


「悪いけどヒマじゃないの」

眉間にシワを寄せて、しっしっと手で追い払われる。

「犬じゃないし。困ってるなら力になろうか」


厨房の隅に重ねてあった椅子を、自分とミオの分出して置き、自分はさっさと腰掛ける。

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