Focus
「デザインが決まらないのはこれ?」
コーヒーを置きながら、応募用紙を弾くと、今度は頭を抱えて苦悶の表情を浮かべた。
「そうよ。おかしいでしょ。ウエディングで提案するケーキは迷うことなく幸せなケーキを作れるのに、ごく普通にケーキを買って食べる人のためには、どう作っていいのかわからなくなってるのよ」
そのままミオは顔を隠して、ごしごしと擦った。
「あーもう、わかんない」
広げられているノートやスケッチブックには、ちいさなきちんとした文字で感想が書いてある。
『すっごい夢みたいなケーキ!!』『憧れの飴ドーム』『こぼれそうなベリー!!ゼラチンがキラキラしてる!!』
どれも素直に感動した部分について書いてあって、ケーキを目の前にしたミオの嬉しそうな顔が浮かんでくる。