Focus
「誰かのためにいつもケーキを作っていたから、どんな理由でケーキを作ったらいいのかわからない?」
こくりとミオの頭が垂れる。
「ケーキを食べる理由なんて、たくさんあるわけ。誰かの誕生日だったり、お友達への手土産だとか、ちょっと頑張った自分へのご褒美だとか、失恋のヤケ食いだとか……考えたらきりがない。
あたしがここで作っているケーキは、華やかな幸せの象徴なの。
でも、普通の人はいつ、どんなケーキを食べたいのかわからなくなったの」
普段なら悩むよりも手を動かして試作するミオが、ここまで悩むことに驚く。
ストレスが溜まるとお菓子を作って、食べて発散させるのがミオのやり方だ。