Focus
「好みを知らない、どこかの誰かのために作るなんて難しすぎるんじゃないの」
身を乗り出して、ミオのまぶたに指で触れる。
「目を閉じてみて」
ミオはためらいながらも、そっと目を伏せる。お菓子のためにお化粧はごく薄くしているだけなのに、肌のきめの細やかさや、長い睫毛がミオの顔の造形の良さを語っていた。
黙っていたら、凄くかわいいのに。負けず嫌いの頑張りやなので勿体ない。
「誰の顔が浮かんだ?」
目を閉じたまま、首を傾げる。
「両親?兄弟?それとも親友?」