Focus

「恋愛ってさ、無防備だよね。どんなに隠したくても隠せなくて、ちょっとした隙に滲み出るんだよね。

にやけたり、落ち込んだり自分じゃどうにもできなくなる」



カウンターに置かれた日本酒を前にして、礼治さんは優しい顔になる。

普段は、自ら進んで軽い人間を演じているかのように見える程、落ち着いた大人の雰囲気を醸し出していて、ついぽろりと言葉がこぼれ落ちた。

「俺は、自分が情けなくなるばかりです。彼女と釣り合うくらいの男になりたいのに、実際は子供すぎてヘタレすぎて頼ってもらうこともできない。焦っていらついて、礼治さんにも回りにも迷惑かけてばかりです」

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