Focus
「あっ、なにそれプリン」
ささっとテーブルを回りこんで、容器を覗きこんでくる。大好物のプリンには鼻がきくのか、じいっと見つめてくるので、ひとりで食べるのが辛くなる。
「……味見する?」
試しに聞いてみると、嬉しそうにこくこくと頷くので、スプーンにプリンをすくって差し出した。
ちらりと上目づかいで恥ずかしそうにこちらを見てくるけれど、気づかないふりをして口元まで運ぶ。
「……いいよ自分で食べられるから」
照れているのはわかる。だけどこっちだってさんざん待ちぼうけで放置されていたんだから意地悪だってしたくなる。
「今すぐ口を開けなかったら、やらない」
ミオは俺とプリンを交互に見比べて、俺が考えを変えないことに気がついたらしく、しぶしぶと口をあけた。
普段なら、軽口での応酬があるところなのに、待たせたせいで俺の機嫌が最低レベルだとわかったのだろう。