Focus
出来あがっているシュガークラフトの隣に、冷蔵庫から出したホールケーキを置いて、ふうっと深呼吸した。
「結輝には特別に完成までみせるけど、話しかけないで」
ホールケーキにはクリームが綺麗に盛られてあとは飾りつけだけになっている。
シュガークラフトのおばあちゃんを手に取ったミオは、真ん中に置かずにケーキの上部中央に置いた。続けて少し下に男性、女性、女性と一列にシュガークラフトを並べていく。さらにその隣に配偶者とおぼしき男女。さらに、その下の段には子供。
この状態をクリスマスツリーに例えるなら、てっぺんで輝く星がおばあちゃんで、お子さんとお孫さんが、おばあちゃんを支えるように配置されていた。
細かい仕事を厭わないミオらしく、それぞれのシュガークラフトには特徴を持たせてあり、お父さんがゴルフクラブを持っていたり、ケーキを持ったお母さん、子猫を抱いた女の子など、どれもが繊細で丁寧に形作られていた。
進化をあらわす系統樹のように、枝分かれして繁栄していく生命、または海に向かって広がる命の奔流のようだった。
「なんだかいいね」
「そうよ。自信作なんだから」
笑ったミオは、仕事に誇りをもった顔だった。