Focus

「結輝、ほんとは呆れてると思った。こんなことしたって食べたらなくなってしまうものなんだから、バカみたいじゃないかって」


ミオは、ひっそりと息をつめた。迷ったり悩んでしまうことの、どれが正しいのかわかっていても、妥協や諦めで違うものを選んでしまうこともある。

ただミオにはそれを選んで欲しくなかった。その道を選んだなら、大変だとわかりきっていても、笑って歩いて欲しい。


「それで? 」

「呆れてない? こんな時間まで」

真っ直ぐに見つめる瞳はわずかに揺れている。


「これはミオにとって必要なことだったんだろ。ミオが自分で決めて頑張ったことなんだから、俺は反対なんてしないよ。よく出来てる。ミオは食べてなくなってしまうと言ったけど、きっとそのおばあちゃんにも、娘さんやお孫さんにもきっと伝わるよ。食べてなくなってしまうからって、おしまいなんかじゃない」


ふっと息をはいたミオが笑顔になる。
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