Focus

伊部さんの携帯が着信を告げると、席を立って二人を迎えにいってしまった。

コーラを舐めている現地コーディネーターは、明日の撮影場所やお昼の打ち合わせを終えてからは静かに存在を主張していた。

もちろん何が食べたいと言えば、美味しいお店を紹介してくれたり、時間があれば連れていく約束をしてくれる。

日に焼けた肌は、あどけない顔を引き締めていた。

ぼんやり顔を眺めていたら、ニカッと笑われた。

「こっちのケがあるの」

手を顎にあてしなを作ってみせる。間違っても男に気があって見つめていた訳じゃない。


「違っ…なんか手持ち無沙汰で」


礼治さんは黙って泡盛を飲んでいて、話しかけづらい雰囲気を醸し出している。
いつも和やかに場を盛り上げる礼治さんが静かだと、俺も合わせて大人しくするしかない。



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