Focus
目を凝らすと、女の子が一人で三人の男に囲まれていた。
「だからね、飲みに行こうよ」
「大丈夫だって。俺らと居るって言っとけばいいっしょー」
「あのっ基本団体行動というか、自分勝手なのはダメなんですっ」
声が届いて誰だかわかる。思わず眉をしかめてしまう。このわずかな間にも、ナンパされていたなんて、どういうこと。
玲奈ちゃんの体に触ろうとした男の肩を後ろから掴んで引く。
思いのほか力が入っていてぐらりと体が傾ぐ。
「…何だよ、テメエは」
「悪いけど、その子連れなんだよね。その汚い手を引っ込めてくれない?」
穏便さを装った傲慢さ。ああ、煙草吸いたいのになぁなんて頭の片隅にあって、一対三だと不利じゃないかなんて出て来なかった。