Focus
ゆらゆら
高速で掻き回されるエンジンが切られると、白い泡の軌跡がゆっくりと消えていく。
たぷん、とぷん
波が船べりに打ち付ける音がする。透明度の高い海は明るくて、どこまでも見渡せる。
「結輝、着いたぞ」
「了解。一本目行ってくる」
船長が船の碇を下ろすと、酸素ボンベを背負って背中から海に飛び込む。
飛び込むことによって泡だった視界が晴れてくると、青い清浄な世界が目の前に広がる。水の色は明るく澄んで、それでいて場所による違いを感じられる。
青に緑に見えるそれは、優しくて温かく自分を包んでいた。
明るく輝いている水面から射す光の筋が揺らめいて、神殿にいるかのような神秘的な光景になる。