Focus

嫌な予感しかしない。喉がからからになっていて、声を絞り出すのがやっとだ。


「嫌なことだとしても、やっぱり自分の目で見て納得したい」

「そうか。なら行こう。ただ結輝ががっかりするのを見たくなかったんだ」

ゆらゆらと波に揺れていたボートにエンジンがかかり、息を吹き返した。地元の勘で、迷いなく次の撮影場所まで運ばれる。

ポイントを定めて錨を下ろすと船長が目で促す。


待ちきれないような、見たくないようなもどかしさに押されて海に飛び込む。

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