Focus
飛び込んだことによって耳が詰まる。音のくぐもるのがどこか遠くの事のようで、自分の体なのに自由にならない違和感がまとわりつく。泡が晴れるわずかな間に耳抜きをして、じっと待つ。
晴れていく泡はゆらゆらと立ち上っていき、視界から珊瑚をあらわにしていく。
ぱっと見た感じでは、そう変わっていないようだった。
ただ側に寄れば、淡々として陽炎のように揺れている命をそこに感じることができなかった。
ざらりとして無機質な穴が空いているだけの物でしかなかった。
衝撃が大きすぎて、体がうまく動かない。耳抜きしたくせに、上と下が解らなくなって上るつもりで、潜水していっているみたいだ。
ため息でさえ銀色のゆらゆらした泡になって消えていく。