Focus
「携帯はある?」
「あ、はい」
「じゃあ登録しておいてね」
慌てて携帯を出すと、沙那さんは数字をすらすらと読みあげた。
こんなに簡単に携帯番号を知ることが出来るとは思っていなかったので、嬉しいのと緊張がごちゃまぜになる。
あんまりにやけすぎないように、気持ちを落ち着けて番号を読みあげる。
「そう。連絡ちょうだいね」
ひらひらと手を振って沙那さんは席を立った。
ちょうどお客様が見えたので、沙那さんは後について部屋を出ていく。
「後で、必ず」
急に、この小さな携帯が、とても大切な物なものに見えてきて、大事に両手で包み込む。