Focus
「そうねぇ。若いんだからお肉をガッツリいっちゃったら」
メニューを指している指が白くて綺麗だ。メニューを覗き込むようにして少しだけ近づいた距離にドキリとする。
「若いって沙那さんだって若いでしょ」
「やあね。もう28なのよ。十分、いい歳なんだって」
「あ……でも、綺麗ですよ」
まだ子供じみた25の自分からしたら、女性のほうがずっと大人でしっかりしている。まして沙那さんは3つ年上なんだから。
沙那さんからは、大人の女性の余裕を感じる。十分に成熟した女らしさがあって、本人も自覚して磨きあげられた美しさがある。
「お世辞でも嬉しいわ」
かなり言うのに勇気がいったのに、さらりと流してくる。
「本当です。お世辞なんかじゃなく」